煙詰
煙詰は看寿の図巧99番に付けられた命名です。 98番の「裸王」の次に全駒使用の煙詰をもってくるこの 正統的でかつ衝撃的な演出には感動を覚えずにいられません。
夏木立と同様に,これまた「固有名詞」だったのが「一般名詞」に 成長した言葉です。看寿の偉大さを再認識させられます。
では,「煙詰」とはなにかということですが(煙詰趣向と本当はいうべきなのでしょうが), それは,1題並べればすぐ理解できる事なので,ここにはあえて書きません。 ご存じない方こそ,まずは並べる,できたら解かれることをお薦めします。 看寿の「煙詰」の棋譜ファイルには解説も入れておきましたので 詰将棋初心者の方は参考にしてください。
1号局にしてこの完成度。看寿はボツにした煙詰を何局も創っていたのでしょうか? それとも天才というものは,いきなりこの水準の作品を創りあげてしまうものなのでしょうか?
1952年に黒川一郎が煙詰趣向の第2号局「落花」を発表するまで このアイデアを実現した唯一の図でありました。
私が初めて手にした詰将棋パラダイスに,この「般若」の結果稿が載っていました。
「ずいぶん駒数も手数もすごいな」
と,盤に駒を並べて
手順を進めていった時の驚きはいまでもはっきりと
思い出すことができます。
煙詰は非常に厳しい創作条件ですから, 同じような追い手順,収束を用いることが 容認されていた時期もありました。 それにも関わらず,この詰上がりの 作品は本作だけです。
実に残念。。。
何回も盤に並べてみたくなる作品というのは, そう多くはありません。 一度並べて,すごいもんだと感心してもそれっきりという作品のほうが多いのです。 柳田明師兄の代表作「稲村ケ崎」は,何度でも並べたくなる名品です。
名作です。
詰上がりが隅でない場合, 最終駒数は4枚になります。 当初は「準煙詰」と呼ばれることもありましたが, 条件を充たしているかどうかよりも, 作品の素晴らしさが優先されるものであります。
200手にも達しようという長手数の煙詰です。 初形を見ても,手順を見ても, 実に自然で無理を感じるところがありません。
作者の卓越した手腕のなせる業でありましょう。 添川氏には他にも多数の煙詰の傑作があります。 煙詰のみの作品集の感性を楽しみに待ちましょう。
理想的な煙詰とはどういう作品であるか?
作者はこのような問いを自らにしたわけです。
そしてだした結論は……
- 美しい趣向手順で締めくくられる
- 序盤に最終盤とつながる伏線がある
- つなぎも水準を保った上品な手順である
- 初形も美しい安定したものである
当初「青春」と題されていたこの作品には 文字通り作者の青春のエネルギーが 凝縮されており,未来永劫輝き続けることでありましょう。