風日記soft6

普通の日記です。

優しい子よ

大崎善生さんの新作である。 高橋和ブログで紹介されていたので 初めて小説現代なる雑誌を購入した。

この文章を読んでいらっしゃる方にとって大崎善生といえば, 「たくさん詰将棋の付録を作ってくれた「将棋世界」編集長」という認識だろう。 作家としても「聖の青春」(はてなに書いた感想)か「将棋の子」 の作家という認識に違いない。

ところが,そうではないのである。 mixi大崎善生のコミュがあるのだが,そこに集まっているのは 20歳前後の若い女性たちである。 これが,大崎善生のファン層なのである。 語られている作品も「アジアンタムブルー」とか, 「別れの後の静かな午後」とか,タイトルだけで我々には縁が無いことがわかる。

そんなわけで,この作品も将棋がかすかに登場はするけれど,みなさんが読む作品とは 違うと思う。 でも,一応念のために追記の形にしておきます。

聖の青春 将棋の子 アジアンタムブルー 別れの後の静かな午後

これは高橋和への長大なラブレターである。

そんなものを書いてしまえるほどに,大崎善生の筆力が上がったということだろう。 (プロ棋士が強くなったとアマチュアが語るのと同様に寛大な気持ちでお読みください) 「聖の青春」ではあちこち文章にささくれがあり,ひっかかったが, この「優しい子よ」では 筆にまったくよどみが無い。 それでいて,ぬけぬけと妻へのラブレターを書いてしまえるというのだから, これはもうかなりの「芸」だ。

高橋和も私の中では今までずっと「少女」のイメージだった。 セーラー服でスーパーマリオのゲームで遊ぶ少女のイメージである。 それが,この作品を読んでやっと払拭された。 読み終えて,ふっくらと生々しい高橋和の手の感触を覚えた。 子どもを愛する成熟した大人の女性になった。

そしてこの夫婦の純粋さに感動してしまうのである。