受難を意味づけにした遠打
最後の小林さんの作品に 「浦壁氏作がヒントなのだろうが,見える人が創るとこういう作品が出来上がる……。 」 と書いた。
作者自身も詰棋めいと19号の「マイベスト展」で上の作品についてこう書いている。
指し将棋で,例えば17飛がいる局面で下から19香と打つ筋のことを, 「飛車にエンジンを付ける」と表現していたのをどこかで読んだことがある。 詰将棋でもこの筋を応用した作品は多くあるが, 超短編での作例として, パラ入会間もない頃に苦心して解いた浦壁和彦作の印象は鮮烈であった。 後に,某氏が二枚角で表現した試作を見たとき, 香・飛の縦型でやってみたらどうだろう……と思って手がけたのが本作である。 質駒を取るという構成にしなかったところが工夫で,大して苦労せずにまとまった。
あとで判ってみれば,山田修司作に前例があり, 構想部分はほとんど同一であった。 それでも最短手数の原理図としての価値はあるのではないかと思っている。
ここで紹介されている浦壁作(Uraさん)と山田作は下の作品である。
ちなみに文中の「某氏」とはたぶん私のことだと思うが, 図面は残っていない。 でも,たぶんあんな手順作ったような記憶があるからそうなんだろう。
いや,書き留めておきたかったのは,そんなことではなくて, 7手詰でもっと古いのを見つけたという話。 「独楽のさと」を鑑賞していて見つけた。
想像をめぐらせて見ると,浦壁さんがこの作品を見て「角2枚では妙手感に乏しいし,
似たようなのは宗看にもある。飛車にしてしかも最遠打にしよう」と創作。
それを見た某氏が,ご丁寧にも,角2枚に先祖がえりさせ,それを見た小林さんが
香・飛に改良した。
とまぁ勝手な想像ではありますが,
個人の創作史の中で作品同士につながりがあるように,
詰将棋プール全体の中でもつながりのある作品というのは当然ながらあるわけです。